残雪まばゆい草津町にて。
　時折り『ドスン！』と木造三階建てを揺らす大きな音。
　屋根に貼りついた雪の塊が落ちる音は、春の訪問者。この季節の軒下は、"危険立入禁止"。板長さんの車が、これにやられたこともあったとか。
　路面の雪はすっかり融け、��西ノ河原�≠熾烽ｫ易く、快晴の天狗山ゲレンデへ。
　先月まであった大きなカマクラももはやなく、代わって色とりどりのスキー客がワンサカと。消えてなくなるばかりの雪を惜しむように、休日を満喫する家族連れのにぎやかな声がありました。
　帰り道、道路脇に熊笹の群生が。
　おや、日陰になった笹の葉一枚一枚にツララが垂れ下がっていました。幾筋もの細長くはかなげなツララから雫が『ポトリ。ポトリ。』ここにも春の音。
　午後三時、��ロバのパン屋さん�≠烽ﾇきの��可愛い魚屋さん�≠ｪやって来て、主婦達を呼び寄せれば、どこからか野良猫どもが湧いて出ました。冬のあいだ姿を現さなかった仔達の『ミャーミャー』と春の声。

　そして今、誰もいないロビーでこれを書いています。
　聞こえるのは、柱時計が『カッチ、コッチ、……』とご丁寧に永遠を刻む音。窓ガラス越しに、夕映えのなかぽっかり浮かんだ雪山を望めます。
　遠く白根山を仰ぎつつ、春の気配の温泉宿が、カッチ、コッチ、と暮れてゆきます。

　　　　　　　　　夜半から春雪さわさわ